ぼくらはみんな美の奴隷

美を見て死ぬいつかのあなたとわたしのために

補足と、「芸術」と「美術」ということばを知ること

こんにちは。筆者だよ。

長らく空いてしまったよ。年も変わり、今年こそは、たくさん、やるぞ。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

まずは前回の発言について少し補足があるよ。

日本と欧米のアートフェアの規模についてだよ。

日本でもっとも大きなアートフェアは、みんなの予想通り東京で開催されている「アートフェア東京」だよ。2005年にはじまって、今年で11回目。正確な数値はまだ発表されていないけど6万人の動員を見込んでいて、去年は5.5万人が来場したよ。参加galleryは157で、うち国内のところは138だよ。

一方世界では、スイスのバーゼルで行われる「アート・バーゼル」が世界最大規模といわれているよ。1970年に始まって、今年でなんと46回め。動員は7万人を越えていて、参加galleryは300前後、1万点くらいの出品があるよ。

 

ここでのポイントは、「人口に対する来場者数」だよ。

東京の人口は1320万人。対してバーゼルの人口は16万人。

もちろん、バーゼルの面積は千代田区(アートフェア東京の会場である東京国際フォーラムがある)とお隣の中央区を足したくらいなので、千代田区と中央区との人口と比べるなら、わずかに少ないくらいなのだけど、アートフェア東京は「東京」って名乗っちゃってるから、もうそこは向こうさんの責任です。

きみが「東京」を名乗るなら、これが「東京」のすべてです、そういうことになるのだから、こうやって比較するしかない。

 

2015年の2月、ニューヨーク・タイムズが世界の国際アートフェアの動員数について書いた興味深い記事があるのですが、

www.artnews.com

このわかりやすい図を見て頂きますと、日本のフェアについてはひとつも載っていません。アートフェア東京は国際的マーケットにカウントされていないのです。当然ではあるけど…。

 

まーそんなこんなで、まだまだだねえというとこで今回は止めておきます。

自分もまだまだ勉強中の身なので、また追記できたら。

 

★そういえば、つい先日、表参道スパイラルガーデンにて、

「the artfair +plus-ultra」というイヴェントがあったので行ってきました。

買い物ついでの若い人も多くて、どのギャラリーの方もとても親切にしてくださった。

うれしかったなあ。2点、買いました。

 

systemultra.com

 

 

で、遥か彼方昔の前回、『「芸術」と「美術」について書く』と言ったので、ここらでひとつ確認しておきましょう。

 

みなさん、言葉の意味を調べるとき、なにで調べていますか?

ネットで済ませちゃっていませんか?

 

もちろん、意味の大枠をつかんだり、読み方や書き方を確認するならそれで十分です。しかし、やっぱり最後には、紙の辞書で、言葉の意味をちゃんと確認するのがもっともよい方法であると思われます。

どこが責任もって書いたのか、だれが責任もって定義付けしているのかが明記されている辞書がよいです。

 

わたしが進学先の先生に勧めていただいたのは日本国語大辞典ですが、「必ず紙の辞書をひいて、きちんと定義づけを理解しなさい。曖昧にことばを使ってはいけません。そんなことをすれば、文章も議論もまったく意味のない空虚なものになってしまうから」と何度も何度も指導いただきましたし、まったくその通りだと思います。

 

わたしは、言葉で説明ができないものを信用しません。

一方で、芸術には信用なんていらないだろとも思います。

 

でも私は、私が好きな芸術の、何が、どんな点が評価できる部分なのか、言葉にすることは、たぶんできます。

なぜなら、きちんと言葉にしないとレポートで加点されないし、他者に伝えることができません。

 

他者と感情の共有なんて不可能です。完全に理解し合うことができないから、「同じことば」というもので媒介して、あゆみよっていくのです。

 

では、ここで、わたしの「芸術」と「美術」の理解を共有してください。

 

げい-じゅつ【芸術】〚名〛

①学芸と技術。

②武芸と技術。

③鑑賞の対象となるものを人為的に創造する技術。空間芸術(建築・工芸・絵画)、時間芸術(音楽・文芸)、総合芸術(オペラ・舞踊・演劇・映画)など。また、ごその作品。

④高等学校における教育課程の一つ。各科目に必要な知識や技術を取得させ、創造的表現と鑑賞の能力を高めることを目的とする。音楽、美術、工芸、書道が含まれる。

 

みなさんがご存じの意味、じつは三番目なんです。Artはもともとは、Nature(自然物)の対義語として、人為による技術を意味していました。語誌も興味深いです。

 

近世まではもっぱら「学芸・技術」の意で用いられたが、明治期に西洋文化の摂取が盛んになるに及んで、英語のartその他、美の表現・創造を共通の概念とするヨーロッパ各言語の訳語としての③の意が出現した。ただし、明治初期にはむしろ同じ訳語に「美術」を用いることがより一般的であり、「芸術」が新しい意義で定着するのは、ほぼ明治三〇年前後である。 

 

そして美術はこう。

 

び-じゅつ【美術】〚名〛(英 fine artsの訳語)

美を表現する芸術。現在では特に、空間的・視覚的美を表す絵画、彫刻、建築、工芸、写真などをいうが、明治期には詩歌、小説、音楽なども含めて広くいった。 *美妙学説(1872)<西周>一「西洋にて現今美術の中に数ふるは画学(ペインティング)、彫像術(スカルプチュール)、彫刻術(エングレーヰング)、工匠術(アルキテクト)なれど、猶是に詩歌(ポエト)、散文(プロス)、音楽(ミジウク)、又漢土にては書も此類にて皆美妙学の元理に適当する者とし、猶延いては舞楽、演劇の類にも及ぶべし」

 

私が「Art/Arts」ということばを使うとき、なんとなく訳語に「美術」を使うことが躊躇われるのは、近代になって「美を否定する芸術」が登場したためです。芸術そのものに対するアンチテーゼ的な作品も多く登場しました。「反芸術」(最終的にこれらは自らを否定する結果となり衰退していきましたが、その影響力は絶大です)などがよい例ですね。

ここは美術の講義の場ではないので、詳しい説明などはしませんし、前述のとおり私自身まだまだ勉強中の身ですので、みなさまに講釈垂れるような真似はできません。

 

 

とまあ、このような感じで、私の認識(=辞書の定義)を共有していただけると、今後の記事もより齟齬なくお伝えできるかと思います。

 

私はいつも、以上の言葉を書き写したA4のコピー用紙(私は講義ノートをとる際コピー用紙を使用しています。印刷にもすぐ対応できるし、罫線があると邪魔なことも多いし、何より安い!)を、レジュメやフライヤーをまとめたクリアファイル(ノートがコピー用紙なので、必然的にクリアファイルで管理することになる)の先頭に挟んでいます。

いつもいつも見返して、ちゃんと自分のなかに落とし込めるように。

 

言葉はとても大切です。適当に曖昧に使うのでは、相手にもそれくらいにしか伝わらない。キャッチーなフレーズではなく、誠実な言葉を選ぶ。

そうしてこれからのものを作っていきたいと思います。

 

 

とりあえず、この記事をアップしないと先が進まないので、取り急ぎ、なんの脈絡もありませんが、これにて。